最近、人と人とのつながりやそうしたコラボレーションから生まれる活動が今後いかに重要になってくるかを考える機会が増えたように感じる。先日、横浜のランドマークにある街のシェアスペース「BUKATSUDO」の文化祭に立ち寄り「企画でメシを食っていく」の番外編で行われていたトークショーを聞いてきた。その時にも人の出会いから生まれた活動の話があった。「企画でメシを食っていく」というのは、「BUKATSUDO」で毎週行われている講義で、“企画する力を育みながら仲間を見つけられる場をつくりたい”という思いをもとに開催されている。普段は受講生しか聞くことができないが、私が聞いたトークショーは文化祭のための番外編ということで一般公開されていた。
今回は、講座の主催者であるコピーライターの阿部広太郎さんと日本バブルサッカー協会の理事などを行う澤田智洋さんのお話しを聞いて、私が感じた人と人の出会いから起こる化学反応のようなものについて考えてみる。化学反応という表現が適切かどうかはわからないが、それはとにかくパワフルでたくさんの可能性を秘めている!といま私は思っている。
普段はいろいろな大人の”部活”が開かれたりしている。
トークショーは、主催者の阿部さんが、今話題の“ゆるスポーツ”などを考案する澤田さんをゲストに迎えるという形でスタートした。ちなみに“ゆるスポーツ”について補足すると、運動音痴を自負する澤田さんが“誰でもできるスポーツ”をテーマに考えた、ゆるいスポーツのことである。と、紹介はこのあたりにして私の印象に一番残った澤田さんのお話しの一節について書いていきたい。
澤田さんには生まれつき目の見えない幼い息子がいる。そこで、障害をもつ我が子をどう育てていけばいいのか右も左もわからないという状況に陥ったが、障害を持つ人の育て方は同じ環境で育った人に聞けばいい。と思い立ち、視覚障害を持ちながら育ってきた人達にとにかく会いまくったそう。会って話を聞き、障害をもつ人の視点でしか分からないことに触れるうちに、“障害者の世界”というものにどんどん惹かれていったと言う。息子の障害をきっかけに起こった思いがけない出会いが世界を広げてくれた。それはとても素敵なことだと思った。もしも、澤田さんが障害のことを本で勉強していたらこの出会いはなかっただろう。実際に会って話をしてつながりを持ったからこそ、新境地に出会えたのだと思う。ネガティブなきっかけがポジティブなきっかけにつながった。一見真逆な要素のつながりに私はとても感動してしまった。
ゆるスポーツのひとつ”ベビーバスケット”を実際に体験した時の様子。
このボールは特殊で優しく扱わないと泣き出してしまう。
そして、そこから様々な活動が起こった。例えば、澤田さんがプロデューサーを務めた「切断ヴィーナスショー」。これは義足女性のファッションショーで、ネガティブな要素をポジティブに発信していこうというもの。義足を強調しドレスアップしている姿には不思議な魅力がある。それから、見えない、聞こえない、歩けない障害者ヒーローの“ないマン”たちが、日常に潜在する様々なモンスターと戦うという3コマ漫画も始まっている。読んでみると、当事者に実際に起きた事がユーモアを交えてわかりやすく描かれ、私は早くも次の更新がとても楽しみになった。
また、“ゆるスポーツ”も始まりは自身の運動音痴からというが、対象者はいまや“老若男女健障”。この言葉が表すのは文字通り、お年寄り、若い人、男子、女子に加え、健康な人、障害を持った人。つまり、どんな背景を持った人もできる、みんなを巻きこんだスポーツなのだ。一緒にスポーツをすることで、知らず知らずに巻き込まれた“老若男女健障”の人たちが関わり合い、そこから新たな世界が広がっていく。
このような小さな出会いをきっかけに、様々な背景を持つ人たちがどんどんつながって、新しい波が起きることが私は楽しみになった。重要なのは、思いがけない出会いをひとつひとつ大切にすること。それがネガティブなこともポジティブに変えてくれるかもしれないのだから。
コメント