6月29日(月)に東京大学にある福武ホールで行なわれた「ミライバ」という公開研究会にボランティア兼参加者として参加をした。「ミライバ」とはタイトル通り、未来の場について考える公開研究会のことである。今回は「地域のヒト・モノ・コトを繋げる仕組み― 海士町 巡の環の取り組みから ―」というタイトルで、株式会社巡の環の信岡良亮さんをゲストスピーカーとしてお招きしたミライバが行なわれた。
ミライバが実施されるのは今回で9回目。8回目まではゲストスピーカーによるお話を1時間程度聞いた後に、小グループでディスカッション、そして質疑応答という形がとられてきた。しかし今回は初めてワークショップ形式で行なわれた。私は第7回目のミライバには参加をしたことがあったので、ワークショップ形式でのミライバってどんなふうになるのだろう、と思いながら参加をした。
▲第7回目のときにはイスだけを並べて、講義を聞きやすいような会場設営をしたのだが、今回は初のワークショップ形式のミライバということで机とイスはほとんど動かすことがなかった。
まず最初に信岡さんから、人口が減少している社会での都会と田舎の未来についてのお話があった。ここでは信岡さんの問題意識、そして信岡さんが作りたいと思っている都会と田舎の関係性についてお聞きすることができた。都会の方が人口も多くて便利で、お金も稼げる。反対に田舎は人口も少なく不便なことも多いし、お金も都会ほどは稼げない。だからといって都会の方が偉い、みたいな考え方は違うのではないか、と信岡さん。さらに「稼ぎが得意なお父さんと、育むことが得意なお母さん」という比喩を用いて、都市と農村というものを一つのチームとしての関係性を都会と田舎で作りたい、と信岡さんはおっしゃった。
次に参加者たちと信岡さんでパネルディスカッションをした後、ワールドカフェを2ラウンド行なった。ワールドカフェのテーマは「これからの社会はどんな変化をしていき、その変化をどう捉えれば私たちの暮らしは豊かになるか。」というテーマだった。私が座っていた最初のテーブルでは、なんだかんだで子どもの教育費がかかるからお金は必要になるだろう、このままだと日本は人口が減少していくと思うが人口が減少していったら不幸になるのか、そもそも豊かさとは何?など様々な意見や問いが出た。中でも私が特に印象に残ったのは「今まではみんなが同じ方向を目指してきた。便利な世の中にしたい、とみんなが言ってきたから今の便利と呼ばれる世の中になっていった。けれど今はそれを嫌だ、という人もいる。」という話になったときである。このとき私の中で二つの図が思い浮かんだ。一つ目は多くの人々が同じ形の未来を目指している図。もう一つはひとりひとりが違う形の未来をそれぞれ目指している図。これらの図を模造紙に描いたところで1ラウンド目は終了した。
2ラウンド目は最初にそれぞれのグループで話した内容を簡単に共有し、共有したことを踏まえた上でディスカッションが続いた。ここではIターンに行きたいと考えている人、生まれも育ちも東京でIターンをすると失われるものが多いのではないかと思っている人など特に違った価値観を持っている人たちが集まったのではないか、と思う。そして最終的にはそれぞれの地域の文化を優劣で捉えるのではなく、特徴として捉えてお互いに認め合えたらいいよね、という話になった。しかしすぐにお互いの違った地域の文化を認め合うことはとても難しい上にもしかすると時間をかけても難しいかもしれない、と私が意見を言ったところで2ラウンド目は終了した。
交通の便がよく、人口が多くて、日本の中心となるものがそろっている都会で暮らすことが自分にとって豊かだと感じている人もいるだろう。反対に交通の便はさほどよくなく、人口が少なくて、自然にあふれている地方で暮らすことが自分にとって豊かだと感じている人もいるだろう。これから社会がどのように変化をしていくにせよ、まずは自分自身にとっての豊かさは何なのかということについて考える必要があるのではないかと思う。みんなで同じ方向を向いて同じ未来を目指す、といった時代は終わったのかもしれない。まずは自分自身の豊かさについて考えることがとても重要なことなのではないか、と今回のミライバでは感じた。
コメント