2/14はバレンタインデーだった。チョコレートやクッキーをつくったりタオルを選んだり、贈りものの中身をつくることはしている女の子は多かったのではと思う。渡す相手のことを考えている時間はわくわくどきどきしてたのしい。
では、それをどうやって渡すのか。きっと何かに包んで渡すのではないだろうか。ただ包むのではなくかわいく、他の人とかぶりたくないという気持ちにもなった。ならば、包装紙などのラッピングするものも自分でつくるほうがたのしいのではないか。手作りで世界にひとつだけのオリジナルのものをつくってみたいという思いから、ラッピングのワークショップを企画した。
場所は、わたしがカフェのスタッフをしている『西千葉工作室』(以下、工作室)だ。千葉大学が近く、現在はものづくりしたい人が集う場所としての機能が強く、カフェのスペースと工作のスペースが一体となった空間である。今回のラッピングの企画は、西千葉工作室スタッフのあんこさん、丸山萌さんと一緒に行うことになり手伝わせてもらった。
工作室の向かいには、小学校、中学校があることや、近隣に住んでいる人たちの世代などから、ターゲットは小学生、中学生として、簡単にだれでもできて、ひとりひとり個性が出せるような企画にしようと考えた。コピー機にものを挟んで出力して包装紙をつくる企画と、リボンやマスキングテープを使って仕上げの飾り付けをする企画をやることにして、タイムテーブルを組み『ラッピングであそぼう!』と名付けた。
→『ラッピングであそぼう!』当日Twitterまとめ
≫ラッピングの作品例と、『ラッピングであそぼう!』と書いたポップを工作室のガラス窓に貼って街の人にアピールした。
≫机の上にワークショップで使うものを並べて準備OK!
迎えた当日13:00、あと1時間ではじめられるように、ワークショップで使うものの準備をした。
来る14:00、開始時刻になったのだが人が来ない。せっかく準備したのに…という寂しさを覚えながらも、工作室スタッフの人たちはつくることが好きな人たちであるため、タイムテーブルを気にすることなく自分たちでワークショップを進めることにした。スタッフ同士で「こんなのができた!」「電子部品をコピー機に置いてそのままコピーするのが意外とかわいい」「紙を差し替えてトレーシングペーパーでもやってみたい」と単純にたのしむ時間をしばらく過ごした。ワークショップの企画のはずだったが、そのまま工作室のスタッフ同士が会話をする良い機会となった。
15:00を少し過ぎたころだっただろうか。工作室の上の階に住んでいる、大家さんでもあり、わたしの同級生のお母さんでもある人が友人の方を連れて一緒に来てくれた。スタッフ側もつくることにノってきたところだったため、たのしい雰囲気の中に巻き込みながら手を動かすワークショップまで魅きつけることができたのではないかと思う。教える・教わるという関係ではない、今回の活動の趣旨を説明をしながら、自分たちもつくることを続けながら、つくりかけのものやできたものを見せ合いながら、一緒に過ごすという関係が自然とうまれていて、心地よかった。
17:00ごろ、よく工作室に来てくれているお客さんの白石あすかさんが妹さん(以下、妹さん)と一緒にやってきた。妹さんははじめて工作室にやってきた。あすかさんは自分でポストカードの柄をデザインしたり、消しゴムハンコをつくったり、手を動かしてものをつくることそのものが好きな人だ。妹さんもものづくりが好きだという。しかし、恥ずかしがり屋のためか、初対面の人たちの前ではなかなか手を動かすことができていなかった。
≫机いっぱいに並べられたリボンやマスキングテープなどの材料。わたしはわくわくが止まらない!!
工作室のスタッフは、スケッチやデッサンができたりパソコンの技術が高かったりと、かなり専門的なことを学んでいる人が多い。技術や特技が何もないわたしは、周りの人たちが「すごい人」のように見えて、何もできないわたしは、スタッフをはじめてすぐは肩身が狭かった。もしかしたら妹さんは、すでに机いっぱいに並べられたつくりかけの包装紙やリボン、完成品などを目の前にそのような気持ちになっているのではないか。もしそうだとしたらその気持ちはすごくよくわかる。でもせっかく来てくれたのだ。一緒に何かつくりたい。
「わたしこんなのつくったの。コピー用紙をカッターで筋を入れながらランダムにくり抜いて窓をたくさんつくって、その下にクレヨンで色を塗った紙を重ねることで窓からクレヨンが顔を出す。これやってみる?」
「これやりたい」
この日わたしがつくった包装紙を見せると食い気味に言葉を発していた。何かつくりたい気持ちはあったけど輪に入るタイミングがわからず、どうしていいかわからなかったのかもしれない。この一言で一気に妹さんとの距離が近づいた。
うぃーんうぃーん、とコピー機が音を立て妹の作品がでてきた。白い用紙のため色がよく映える。妹さんはたのしそうにしており、もっと何かつくりたい顔をして言った。
「紙、変えてやってみたい。どうしよう。」
「クラフト紙を使ってみるのはどう?同じものを印刷しても紙を変えるだけで雰囲気変わるかもね。」
「どんなのができるかな!やってみよう。」
参加者を巻き込みながらも、参加者に巻き込まれる体感をした。
≫みんなの作品がずらり。写真手前から2つめの筋がたくさん入った包装紙をあすかさんの妹と一緒につくった。写真一番手前の四角がならんでいるのは萌さんの作品。
この日『ラッピングであそぼう!』に参加してくれたのは合計4人だった。はじめは人が来てくれなくて寂しいという気持ちが多少なりともあったのは事実だが、この人数を少なく感じるだろうか。
わたしがこのワークショップを通して思ったことは、ワークショップの流れを守るよりも、興味を持ってくれて足を運んできてくれた人に対して何ができるかを考えて行動することが大切であるということだ。人を集めたこと=成功ではないと思う。誰とどんな会話をして、何を一緒に考えて、一緒に過ごしたかがわたしの中で心に残っている。ワークショップを成功させることが最大の目的ではなく、ワークショップをおもしろくすることで来てくれた人やスタッフ同士の会話のきっかけづくりの方に重きを置いた活動になったように感じる。だからその場にいる人を巻き込もうという意識を持てたし、巻き込まれることもできたと考える。
何か行動を起こすときに大切なのが集客よりも、どれだけ自分がたのしんでいるか、自分たちが行っていることに価値を感じているかなのではないだろうか。今回は、来てくれた人を巻き込みながら巻き込まれてゆく場をつくれたと思う。そこでできた小さな輪をこれから育てていくことにしようと思う。
コメント