今年の長岡ゼミ夏合宿は、湯河原で行なわれた。夏休みムードを払拭するために、「自作自演」をテーマに、4つのグループに分かれてワークショップを企画・運営することになった。大学生最後の夏休みは、ずっとポートランドへもどって、田舎を満喫していた。この「夏休みムードの払拭」は私にとって重要なことであった。夏休みボケとは恐ろしいもので、一瞬にして「浦島太郎」のように、頭の中も、例えばパソコンへ向かう作業も「ポカーン」となってしまう。今年身をもってリアルに実感した。(遅)まさに私にとってゼミは「補正下着的な場所」 なのだ。
【場づくり】
約1時間をかけ、会場に着いてからまず始めたのは場作りです。「イノベーションが起こりそうな場所」をめざして、ありとあらゆるモノや道具を使って、会場を飾り付けたり、机や椅子を設置したり。どうしても整理整頓されたシンメトリーになりがちな大きな会議室を、どのように作るのか。各々考えながら、楽しみながら、声に出しながら、動きながら、約1時間の時間をかけて風船やボード、カラフルなナプキンやレゴなどで、華やかで楽しい空間ができた。驚いたのは、いつの間にか「空間チーム」ができていたことだ。知らず知らずのうちに、何の打ち合わせもなく「チーム」ができてしまう場所というのは、とてもワクワクする場づくりだったと思う。
【Body's Voice Workshop】
最初のワークショップは、チームごごいちによる身体を使ったワークショップ。『ナイフとフォーク』『サンキュー』『こびとのワークショップ』3種類のワークを行なった。特に印象的だったのは、『ナイフとフォーク』である。これは、複数人のグループで出されたお題を表現するというものである。言葉を使ったコミュニケーションは禁止なので、状況をみたり、アイコンタクトを使ったりして、10秒以内に一つの作品を完成させなければならない。最初はごごいちの方で、何人でどのお題をやるか決まっていたのだが、いつのまにか大きな2グループに分かれて、何となくバトル形式でやることになった。ひらがなの「に」、アルファベットの「R」、というシンプルなものから、「フィットネスジム」や「ファッションショー」といったちょっと複雑な物までお題にあがったのだが、答えがきまっている「に」や「R」よりも、「フィットネスジム」や「ファッションショー」のほうが面白いと感じた自分がいた。どうにか1つの絵を完成させたいと思いつつ、協調性を保とうと他の人の真似をすると二番煎じ。なにか「おお」と思われる表現をしたい。しかし、突拍子もないことをすると絵にならない。結局二番煎じについてしまうことが多かった。実はコンサバな自分がいることに気づいた。
【Compare H&M(Hakonori & Mapping)】
おいしいスイーツを食べ終え、次のワークショップはチーム夜型人間による、左脳を駆使するワークショップ。如何にロジカルに考えることができるか。夏休みボケでなまった脳みそには、すこしハードに聞こえた。(笑)ここでは『Hakonori』という箱を使ったゲームと、マップをパズルの様に組み合わせていく『Mapping』というワークを行なった。両者とも、カードを見せてはいけなかったり、ジェスチャーや絵を描いてはいけなかったりという制約条件があったので、情報伝達のワークだと思っていたのだが、先述の通り「如何にロジカルに考えることができるか」である。そのロジカルシンキングのワークは『Hakonori』の冒頭、箱を組み立てる作業から始まった。どうやって折り目をつけずに箱を完成できるか。このワークショップでは、「とりあえずやってみる」という思考ではなく、「絶対」という条件を見つけ出し、組み立てを行なうということだ。幸い自分たちのチームは、ヒントとして考えていたことが、絶対条件と重なり、ラッキーな要素もあり、冷静に組み立てることができた。しかし、完全に絶対条件を使って組み立てた訳ではない。人間には、頭の良さ以外に、引きの強さ、運の良さ、みたいなものも本当に存在するのかもしれない…なんて考えた。つまり、普段は左脳をあまり使わずに生きているのだ、と気づいた。(笑)
【Food Pearing Workshop】
夕飯を終えて、お待ちかねのアンカンファレンス。過去3回のうち2回参加しているのだが、今回のアンカンファレンスにとても驚いた。今年は2年生を中心としたチームアダルトによる『Food Pearing Workshop』(もしかしたらpairing? )長いテーブルにカラフルなナプキンとコースター。シャンパンで始まったアンカンファレンスはとてもおしゃれだった。目の前にはクラッカーがあり、クラッカーと一緒にたくさんの種類のディップやチーズを一緒に食べて、またワインと一緒に飲みながら、組み合せの美味しさを楽しむという内容。一口目に頂いたチーズディップの「明太子×クリームチーズ×ブラックペッパー」が美味しくて、辛さが後を引いてついたくさん食べてしまった。ブルーチーズ×ハニーの組み合せも、ブルーチーズ嫌いの私にも美味しく食べられて、またワインカクテルのキティとの相性がよく…なんていう食レポのコメントをポストイットに貼っていく。おいしいおつまみに調子に乗って、たくさんお酒を飲んでしまって、私は1人真っ赤っかでした。(笑)そのあとは、写真の食材をランダムに引き、想像で料理を作りプレゼンするというワークショップ。以外と無難な食材を引いてしまった私たちは、『Mapping』で発見した「スナックまき」をそのまま引用し、「スナックまき」を推すプレゼンにした。頭も使いながら、飲みながら、真剣になりながら、楽しみながら、そんな空間ができていたと思う。「缶チューハイとただ買っただけのおつまみだけのアンカンファレンスと、作り込まれたアンカンファレンスはこうも違うのか」と身体で実感した。
【まるがたり】
チームくまさんによる、モード変換のワークショップ、『まるがたり』は2日目の朝一番に行なわれた。ちなみに、わたしはこのチームくまさんのファシリテーターだった。寝起きの人が多かったからなのか、疲れがたまっていたのか、場づくりも1日目ほどの盛り上がりはなく淡々と進められた印象だった。チームくまさんでは、2つのワークを行なった。最初に行なった『Present 4 U』というワークは、アロマの香りを10 食のカードの中から選ぶというワークだ。つぎの『まるがたり』は、自分の経験したことを月別に色で表現するというワーク。4月〜8月の5ヶ月の色を10色のカードから選んでいく。その後一つ席を移動して、他人になりきって他人の物語を語ってみる。チームくまさんのファシリテーターとして、盛り上がりそうな雰囲気をどのように作るのか、また継続させるのか、またそれを、3人でどのように連携していくのか上手くいかなかった。また、「春学期の振り返りと秋学期への切り替え」という目的は果たすことができたのか、『まるがたり』をブラッシュアップしていく必要がありそうだ。それぞれのワークショップの深い所、例えば『Present 4 U』だったら、これがモード変換のワークショップで想像力をつけるために行なうことなのだと、そこまで作り込むことができたのだろうか。ここをしっかりと考えたい。
【準備とテンション】
今回の夏合宿で気づいたのは「準備へどれだけ携われたのか」ということと「ハイテンション」でワークショップに臨めるのかということは、密接に関わっている、ということである。明らかに1日目の場づくりと2日目の場づくりの「ワクワク感」は前者の方がより大きく感じたし、全員の「楽しみたい欲」をみてとれた。その結果、1日目のワークショップはとても盛りあがっていたし、enjoyableな空間だった。場を作るという準備段階でどのくらい楽しんで動けるか、というのはとても重要であると思う。そして、それはプログラムでガチガチに作り上げられた計画のようなものではなく、その場、その状況、その場にいる人で変化し、その変化を楽しむプロセスなのであるとも感じた。これが長岡ゼミ的即興的動きなのであって、また『自作自演』の入り口にあるものなのだと思った。この合宿で、ようやく秋学期への準備運動が整ったという思いである。
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