震災から2年。
東日本大震災は、私たちの価値観や生活スタイルを再考させる大きな出来事でした。
そんな中、生活工房15周年記念事業として開催された「日常/非日常展〜世界の明日につながるデザイン」。
私たちフードデザイナーズネットワークは、展示の一環として、「もしもの食」をテーマにしたフードやドリンクが味わえるカフェを3月中の土・日・祝日、7日間限定で三軒茶屋にオープンしました。名付けて、非常食カフェ「もしも」です。
震災を機に、非日常と日常の境目が曖昧になってきたように感じます。そして、それぞれの状況において、必要とされるデザイン。多様に変化する現代社会において、一人ひとりが何を考えて、何について備えるべきでしょうか?私は食とデザインの力で、そんなことを「考えるキッカケ」になれば、という思いで参加を決めました。
プロジェクトは、まず、チームの顔合わせから始まりました。
本プロジェクトは越境型フードデザインと定義され、食とデザインに興味がある有志の大学生6名が集まりました。(私以外、全員美大生だったのですが、普段、接する機会がほとんどないため、全てが真新しく感じました。)
「カフェの名前、どうしよっか?」
「どんなカフェにしたい?」
というコンセプトメイキングから始まり、カフェ全体のレイアウトや小物作り、メニューの構想まで、それぞれの得意分野を分担しながら、1から作りました。私はメニューづくりを担当したのですが、そもそも非常食と保存食の違いが分からなかったり、非常食を食べた事がなかったため、恥ずかしながら「知る」というところからスタートしました。
☆メニュー考案&試食中
☆レイアウトのメインである乾物のカーテン(乾物を作るところから始めました)
☆レセプションパーティー
<工夫した点 その①>
私のように、そもそも非常食を食べた事ない人にとって、非常食を身近な存在にしたいという思い、また一般的に存在する「非常食=美味しくない」というイメージを払拭したいという思いから、体験型のカフェになるように工夫しました。百聞は一見に如かず、です。
アルファ米を使ったチキンライス&乾物入り手作り味噌玉スープ。
それぞれお湯を入れるだけ!
乾パンもクラムチャウダーの中に入れるとあら不思議!美味しく食べれちゃいます。
<工夫した点 その②>
メニューがある程度出来上がってきた頃に、それぞれのメニューは単独では分かりやすいけれども、並べてみるとバラバラしているように感じる、という問題に直面しました。そこで、私たちは「そもそもこの展示会の伝えたいことは何か?」というポイントに立ち返り、バラバラだったメニューを非日常のシチュエーションごとに分類しました。ここでは、メニューの一部をご紹介致します。
<もしも東京に大雪が降ったら>
ロングライフクラッカー チーズとスパイスジャム添え
味噌玉スープ 選べる乾物入り
<もしも山で遭難したら>
ドライフルーツぎっしりケーキ
アルファ米ごはん(日替わり)
<もしも海で漂流したら>
お好み缶詰 クラッカーを添えて
<もしも南極に転勤になったら>
フリーズドライあんこ餅
南極用フリーズドライフード
<もしものときこそリラックス>
ホットコーヒー
サバイバルハーブティー
さらにテーブルで非常食を食べながら、それぞれのシチュエーションを鮮明にイメージさせる仕掛けを作りました。まとめてアイデアを観れるのではなく、“瓶から取り出す”という行為が入ることで、お客さん自身でアクションを起こして、そこからコミュニケーションが生まれる、というものです。
こうして1ヶ月間、誰にどんなことを伝えたいか?を考え続けました。お客さんにオーダーしてもらうことがゴールではなく、非常食に慣れ親しんでもらい、非日常は日常の延長線上にあるということを理解してもらう。そのために、ただ非常食の説明をするだけではなく、オーダーを受けるとき、フードやドリンクを出すとき、そして、お客さんが帰るとき、どの場面でもお客さんとの会話を大切にし、みんなで「食べながら考える」場づくりをしました。
「食」は、生きることそのもの、そして命をつなぐためのもの。日常でも非常時でも、そのことに変わりはありません。だからこそ、非常食を考えるには、ふだんの食生活そのものを考えることが必要になってくるのです。「もしも」を考えることは、「いつも」の暮らしを見つめ直すことであったと、私自身も学ぶことができました。
詳しくは非常食カフェ「もしも」のFacebookページをご覧ください♪
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