8月26日にNPO法人CANVAS主催で行われた「キッズクリエイティブ研究所in二子玉川」に参加した。
まず、NPO法人CANVASとはどのようなところであるかを少し説明する。
子どものための創造・表現の場を提供し、豊かな発想を養う土壌を整えることを目標として、さまざまな分野における関係者の熱意のもとに設立されたNPO法人である。
そして、キッズクリエイティブ研究所とはNPO法人CANVASが主催するこどものためのワークショップシリーズである。
舞台は大学や教育機関などさまざまなスペース。アーティストや専門家によって開発された子どもたちの創造力・表現力を育むさまざまなテーマのプログラムがくりひろげられるところである。
場所は「二子玉川ライズ・オフィスのカタリストBA」である。
カタリストBAとは異なる知識や技術のなかから新しい価値を発見し、試行錯誤を繰り返しながら新しいものを生み出していくオープンイノベーションが展開される舞台である。
今回のテーマは「ヤスってすべらす」「すごくヤスって、もっとすべらす」という造形プログラムであった。
ホームセンターなどで売っている木材を大きなサイズと小さなサイズの二種類を用意し、やすりでヤスっていくのである。
対象は幼児と小学校低学年の子どもたちである。
幼児用シートの上に木材を並べ、子どもたちがそれぞれお気に入りのものを選べるようにした。
木材は木目や色が違い同じものはなかったからだ。
子どもたちは洋服に名札を付けて準備完了。
「みなさん、こんにちは~!!!」とワークショップが始まった。
先月に行われた「ねっつGO!~まわりのお熱をキャッチングー!~」に参加した子どもたちであったので顔を覚えてくれている子もいた。
プログラムの説明が始まった。
「今日はここに2つの木(木材)があります! さて、これは知ってるかな?」
と、紙やすりを子どもたちの前に見せた。
「あっ、紙やすりー!!!」
みんなが大きな声で答えてくれた。
「 そう、紙やすりです! では、この紙やすりを使って木をツルツルにしてみましょう! 」
すると子どもたちはシートの上にある木材の中からお気に入りのものを選び、シートの上に円になって座った。
そして、ひたすら木をヤスっていく。
最初はトゲトゲでザラザラだった木材が、だんだんツルツルになっていくことに驚きながらヤスっていく。
「では、みなさんもう一回集まってくださ~い!!!」 と言われると子どもたちは前に集合した。
「今、みんなが使っていた紙やすりは#180(180番)という名前がついています。でも、他にもこんなにたくさんの種類の紙やすりがあるのです!」
と言って、#320と#400の紙やすりを子どもたちに見せた。
「では、180と320ではどっちの数字が大きいですか~?」と質問をした。
「320,320・・・320,320!320!!!」と答えが返ってきた。
「そうですね、320の方が大きいですね、数字の大きい紙やすりでヤスってみると、どんどんツルツルになっていくのです! では、今度は320の紙やすりでヤスってみましょう! もうツルツルになったよ!っていう人は先生のところに持ってきてください!先生から『合格です』と言われたら次の400番の紙やすりに進みましょう!」
子どもたちは自分の場所に戻り、木をヤスった。
「みてみて、ツルツルになった~!」と喜びながら取り組んでいた。
ファシリテーターが椅子に座り、子どもたちのヤスった木をチェックしながらコミュニケーションをとる。
次のステップへ審査制にすることで子どもたちのやる気UPにつなげていく。
ほとんどの子どもたちが400番をクリアすると、また前に集まった。
「そろそろツルツルになってきましたかー?」
「はーい!!!」
「実はもっと大きな数字の紙やすりがあるんです!」 と、1000番の紙やすりを子どもたちに見せた。
「では、これでヤスって木をもっともっとツルツルにしてみましょう! 先生に合格と言われた人は自分の木に好きな絵を描いてみましょうね!」
子どもたちは木をヤスリ終わると思うがままに好きな絵を描いた。
道を描く子、線路を描く子、お母さんを描く子、いろんな絵があった。
そして、小さな木材の方には自分で好きな名前をつけた。
ツルツルくん、スベスベちゃん、スルスルさんなど可愛い名前がたくさんあった。
そして、大きなサイズの木材の上に小さなサイズの木材を乗せ角度を変えてすべらせた。
紙やすりでヤスったので少し木材を斜めにするだけですべるようになったのを実感していた。
そのあとにみんなのつくった大きなサイズの木材を滑り台のように並べ、小さなサイズの木材を上からすべらした。
「カラン、カラン、カラ、カラン、、、、」といい音を立てた。
すべるというよりは転がるに近い感じがした。
子どもたちは何回も何回も自分のつくった小さな方の木材を上からすべらせた。そのたびに「みてみてすべった!」いうニコリとした表情がたくさん見れた。
このプログラムはこれでおしまいである。
『ひたすら木をヤスっている。』
このプログラムは作品を完成させることが一番の目的ではなく、
夢中になってヤスっている時間を大切に。
ものが自分の手なのかで変化していくことを大切に。
であった。
しかし、ヤスっている時にファシリテーターとおしゃべりをしてしまい没頭してヤスっている雰囲気ではなかった。
そこで小学校低学年クラスでは幼児用シートを川の字にして、横一列に並び同じ方向を向き木材をヤスった。
プログラム内容は同じである。
すると、ヤスることに夢中になっている子どもたちが増えた。私も一緒に木材をヤスった。こんなに木と向き合ったのは初めてかもしれないと思うくらい集中した。
そして十分にヤスれたら絵を描き、完成した作品がこれだ。
このプラグラムは見ている保護者の方にはとても伝わりにくいと感じた。
外から見れば、ただ木を紙やすりでヤスっているだけ。見ている保護者の方からは少し不思議そうな表情が見えた。
しかし、保護者の方にこのプログラムの重要視している部分を伝えることができたので大丈夫である。
なにかに夢中になったり、没頭したりする時間は日常生活のなかであまりない。
その時間をこの場所で経験できたことは子どもたちにとって良いことであると思う。帰っていく子どもたちの表情からそんな思いが感じられたからだ。
子どもたちと一緒に体験したり、感じることで、自分が少し素直になってゆく気がした。
生活している時にはほとんど触れない木に触れ、木の匂いがし、木と木がぶつかり合う音がし、自分の手の中で変化していくことがとても嬉しかった。理由はよくわからないけれどそんな感覚になった。自分の五感をつかい感じることはとても素敵なことだと思った。
これからも、子どもたちと一緒にさまざまなことに挑戦し、刺激を受け、これから先何をしていきたいのかをじっくり考えていきたいと思う。
「そのためにはいっぱい外に出よう!」これが今の私に一番大切なことだ。
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