2週間に及ぶ期末テストが終了した。テスト期間は普段あまり学校で見かけない人にも久々にあったり、テストについて皆で勉強したり情報を交換したりとどこか慌ただしい「お祭りの感じ」がした。単位がかかっているんだから仕方ない。実際僕も必死だった。そんなケムタイ「お祭り感」なテストも終了し、前期がすべて終了した。しかし僕らにはやらねばならないことがある。ながれてしまった前期の4ヶ月という時間を振り返り、自分たちなりに意味を与えなければならない。それがMELCのやり方だ。
ゼミに入って活動が始まってはや4ヶ月。手の指では数えられない程の越境活動を経験でき、様々な人と出会い、いろんな話をして、いろんな事を思わされた。中にはここはまずかったと反省する事も、これはよくできたと満足する事もいっぱいあった。
今日のブログはそのいろんな経験のなかから特に印象に思った出来事について取り上げ、そこから何を学び何を思ったかを振り返ってみたいと思う。ていねいに…そして慎重に…
前期の活動で特に印象深かった出来事は以下のふたつだ。
ひとつは6/29に行われたMALL:経営学習研究所の第2回イベントの「ギャラリーMALL 対話の場づくり入門:ガチャトークを鑑賞する」に学生スタッフとして参加した事だった。会場設営から受付、食事などほぼ1から僕たちが関わってイベントをつくったのは初めての経験だった。詳細については以下のブログを参照してもらえればと思うが、当日はイベント開始前の交流会が大いにもりあがり、予定していたタイムスケジュールは大きく狂った。時間通りきっちり進めたい気持ちと場の盛り上がりに水を差すのではという不安な気持ちの葛藤で、イベントを運営する難しさを思い知らされる一日だった。
またこの日はたまたま父親から一眼レフを借りれるとういうことで、初めて写真撮影の記録係をまかされた。だいたい何をとればブログの報告で使えるのかを考えてはいたが実際はタイムスケジュールのこともあり頭は真っ白。ただ人の顔を撮って終わりとなりそうなところ、中原先生にガチャトークなんだからガチャ玉の写真や手元でガチャ玉を開ける写真をとらないと何のイベントだったかわかんなくなってしまうよ、とアドバイスをいただき少しは流れを説明できる写真をおさえる事ができた。写真の難しさも痛感した一日でもあった。
<ギャラリーMALL 速報レポート>
http://www.tnlab.net/melcblog/2012/06/120630.html
<学生スタッフからみたギャラリーMALL>
http://www.tnlab.net/melcblog/2012/07/120701.html
そしてもう一つが翌週に行われた中原先生主催のイベント 「ACADEMIC HACK 実践記録研究会」のお手伝いに行かせていただいた時のことである。イベント準備の前に中原先生と少しお話する時間をえられた。そのときギャラリーMALLの際に指導してもらった事に絡めて記録する事について話していただいた。記録するという事は、記録者やその場にいる学習者の役に立つだけでなく、実践者の振り返りや第三者への宣伝活動、さらには活動の評価材料にもなるなど大切な役割がある事を学んだ。それまで越境してもさほど写真などの記録をとっていなかった僕にとっては、けっこう強烈な気づきだった。たしかに今までどこにいってどんな活動をして、どんな事を思ったかを説明したり振り返ったりするときに記録がなくて困っていたからである。それ以来、活動する際には大小はあれ必ずカメラを持ち込むようにしている。そして全体の流れが一通り説明できるように意識して写真を撮るようになった。
ACADEMIC HACKでは、実践記録の研究会と同時に場作りの実験も行われた。私たちが普段授業で使っている普通の教室をいかに実践者が智慧を絞り、工夫し人々が相互作用し、コンテキストを共有する「場」に再構築して行くかの「場づくりの実験」だ。今回は清里のkeep森のようちえんの世界を再現すべく、牧村さんを中心に中原先生、高瀬さん、小池君と教室を森に変えてしまった。作業は最初、草のおくところとかライトをどこに置けばいいかなどをクリエイティブな部分を考えながら作業を進めて行くのかと思いきや、実際のところは作業の9割は「掃除」。しかもかなりハード。草花の配置などはほとんど最後の仕上げと言っても過言ではなかった。クリエイティブな事をしようと思ったとしても9割の地味な作業を乗り越えないとそれは達成し得ない事を学んだ。派手派手しくひらめきだけでやるのでなく、コツコツと努力を99%まで重ねて最後の1%で勝負を決める。そんな活動が大事なのだと気づけた日でもあった。
中原淳先生のブログ
http://www.nakahara-lab.net/blog/2012/07/post_1864.html
牧村真帆さんのブログ
http://maholab.net/?p=140
<記録すること、物語ること、コミュニティをつくること>
http://www.tnlab.net/melcblog/2012/07/120707.html
ところで僕が最近特にすきな言葉は「普通で良質な場」だ。この言葉、長岡先生のTwitterを見ていればよく目にする言葉だとは思う。この「普通で良質な場」という考えに魅力を感じたきっかけは長岡研究室で毎月行われる「カフェゼミ」においてだ。「教室」といういつもの環境から飛び出し「カフェ」という場でゼミをやるという実験的な活動だ。第1回はカフェ文化研究家の飯田美樹さんをお呼びして「なぜカフェなのだろう」について考えた。第2回はハナジョブの角めぐみさんを迎えて「大学の境界線」について考えた。そして第3回は上田信行先生の「プレイフルシンキング」の読書会を通して「憧れ」について考えた。最初はどう振る舞っていいかわからず「お祭り感」の強い印象だったが回を重ねるごとに段々雰囲気も落ち着いてきた。「教室」という日常から「カフェ」という非日常に場を移しながら、日常と変わらない活動をする。すると何故か気持ちは普段と変わらないのだが、内容はどこか新鮮で面白い。やってる最中は普通なのに振り返ってみるといつもより面白い議論になっている。「普通で良質な場」にいると面白い事が起きるのかもしれない。そう最近は思わされている。
<第1回 中江さんによる 『カフェゼミ』に行くためにカフェゼミに行く>
http://www.tnlab.net/melcblog/2012/06/120601.html
<第3回 恋に恋するように憧れに憧れる>
http://www.tnlab.net/melcblog/2012/07/120713.html
「普通で良質な場」についてもう一カ所、僕が思わされた場所がある。最近増えているコワーキングスペースで見た光景がまさに「普通で良質な場」で起きた成果な気がした。それはインターン先であったネコワーキングでの事だ。ネコワーキングは地域活性をテーマにした「猫がいるコワーキングスペース」で、毎日のようにいろんな人が集い、そして出会いコラボしていくのを見た。鹿児島県にあるトカラ列島という小さな島々の村おこしに取り組んでいる宮坂さんという方が島でとれるバナナを商品化しようと取り組んでいたのだが、たまたまそこにいたある会社の方と紹介を通して出会い、そこからまた紹介してもらうみたいな出会い方で実際にコラボレーションが起きその島バナナをつかったコンフィチュールを紹介して注目を集めている。地域活性がテーマの場で様々な人が日常的に集まり良質な出会いとアウトプットが起きる。そんな光景を目にした。僕が猫アレルギーでなければもっといろんな出会いとアウトプットに立ち会えただろうと思うと残念だが、そんな事が起きているのをしれただけも良かった。
そしてこの「普通で良質な場」という考えを、最近僕は「普通で良質な〇〇」と置き換えて考えるようにしている。MELCについては「普通で良質な学びのエスノグラフィー」として意識する。派手な事をするのでなく日常的に良質な活動をめざす。そしてコツコツひたむきに記録をとり、ひとつひとつの活動にていねいに意味を与えていく。後期はこの意識をさらに磨きたいと思う。
僕の研究テーマは正直まだ方向は決まってないが、一つ興味の湧いた話がある。
それは母がフランスに旅行をしたとき、あるカフェで強烈な光景を目にしたという。カフェにフランス人が4、5人あつまって新聞をバシバシたたきながら政治がああだ、経済がこうだと議論している。そして彼らは離れたところで一人コーヒーを飲んでいる人を指差し「おいお前!お前もちょっとこっちこいよ!これどう思うよ!」みたいな感じでどんどんひとを巻き込んでいるのである。
この話を聞いたとき、なんとなく僕の心が躍った。こんなカフェのコミュニティがもし日本にあったらおもしろそうじゃないか?日常的に通うカフェでいろんな人と真剣に議論していろんな価値観に触れられる環境が、もしあれば素晴らしいことなのではないか?と思った。そして実は、僕の友達同士でカフェに集まって、あえて真剣な議論をする実験も現在している。
そんな事をしながら、前期の活動を通して学んだことや思った事を生かしながらより面白そうな事をめざして、今後も活動を続けていければと思う。
そしてMELCの活動の目標であるソーシャルな活動とイノベーションをめざして、未熟なイノベーターは動き続けるのである。。
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