2012年4月12日、私にとって初めてmelcの活動。緊張、不安、わくわく、どきどき、様々な感情が入り混じっていた。その日はmelcの活動についての説明とちょっとしたワークショップ、ITツールなどの情報共有のためのアトリエタイムが設けられていた。
長岡先生がmelcの活動について語っているとき、私は胸が高鳴るのを感じていた。最初に教室に入ったときに感じていたものとは全く異なる形のドキドキだ。学びのエスノグラフィー、Casual&Styrish Learning、越境学習。どれもこれも聞き慣れないワードであったが、胸の高鳴りがやむことはなく、むしろどんどん高まっていった。今までとは違った、まったく新しい学びのスタイル。それはとても魅力的で、わくわくするものであった。
この日、私は確信した。この研究室に入ってよかったと。
そしてこの日から、私のmelkの一員としての活動がスタートした。
まず私は、新たな学習のスタイルとして、越境を身につけたいと考えた。越境とは外部の活動に参加していくことで、見知らぬ人と出会いネットワークを築いていくというものだ。ただ待っていれば勝手に水が流れてくる川を飛び出し、ひろい海に出るのだ。直感と好奇心をたよりに、大海原へ飛び出す。そこでは自分で答えを見つけなければならない。障害もたくさんあるだろう。しかし、そこでは自由に動くことができるし、予期しないものに出会える。予定調和とは無縁の世界で、自分次第で、どんどん新しいことにチャレンジし続けることができるのだ。
私の初めての越境は、6月22日に安齋勇樹さんの主催で東京大学の福武ホールで行われたBa Design Labへの参加だった。これは安齋さんがワークショップについての研究として行っている公開研究会のひとつで、私が参加した第3回目のテーマは、「多様性を活かすワークショップ」というものであった。ここではインクルーシブデザインについて研究している京都大学准教授の塩瀬隆之さんのお話を中心に、会は進んでいった。
会の中で、「何が多様性を殺すのか?」「明日から使える技」といったテーマのディスカッションの時間が設けられた。まったく知らない大人と一緒にディスカッションをするというのは自分にとって初めての体験で、私は他の人に話を振ってもらったときに形にならない言葉でしどろもどろになりながら話すのが精いっぱいであった。自分から発言するということが全くできなかった。改めてこの初めての越境の体験を振り返ってみて、意外なことにまず浮かんできたのはのはこのことであった。自分の言葉でうまく語ることのできないもどかしさだ。しかしここで得るものも多くあった。インクルーシブデザインという新しいデザインの手法に出会えたし、見知らぬ人と出会う、という体験もできた。また、この研究会そのものに安齋さんによる参加者同士のコミュニケーションをうながすための仕組みが多く施されていて、そこにとても面白みを感じた。
このように私の初めての越境は、越境先でうまく振る舞うということの難しさと、こういった場に参加することで得られる楽しさの両方に触れることができ、この経験を次につなげていこうと思えたし、これからの越境活動に対する期待感のようなものも感じることができたものであった。
こののち、青山学院大学の刈宿先生による特別講義やまち塾、EduceCafeといった活動に参加し、越境を続けていった。そのなかでも特に印象に残っているのが、慶應大学の牛島先生が主催している連続ワークショップ「ソーシャライズ!自分の旗を立てる」の第一回だ。
このワークショップは渋谷にあるco-ba libraryで開かれた。ここでは自分の旗を立てる、というテーマのもと、これからの雇用と働き方の変化について三石原士さんに、ソーシャルメディアなどにおける情報発信についてブロガーのイケダハヤトさんに語っていただいた。お二人が一貫して言っていたのは、これからの時代は自分の旗を立て、主体的に情報発信を行っていくことがますます重要になってくる、ということだ。
イケダさんの話が終わったあとに、みんなが普段の生活のなかで怒っていることについて、テーブルごとに語ってくださいというお題がでた。私のいるテーブルではそれぞれが日頃感じている問題意識を語り、その問題をどうすれば解決できるのか、という流れで話が進んでいった。そこで私は、それぞれみんなが何かに強い問題意識をもっているということに驚き、感心し、それと同時にいかに自分が普段自分のまわりで起こっている出来事について考えていないか、ということを実感させられた。実をいうとその場にいる人たちに対し引け目すら感じた。問題意識をきちんと持ち、それに向けてなにか行動している人がすごくかっこいいと思えた。
しかし、これはとても幸運なことなのかもしれない。自分が引け目を感じてしまうほどの人たちと一緒に活動することができる。これほど成長の場に適している場所はないようにも思える。引け目を糧にするのも悪くはないのかもしれないと初めて思えた。
そして私は、ここでひとつのささやかな決意をした、自分のブログを作ろう。
このひそかな挑戦が自分にどのように作用するかはまだ分からない。だが、まずはとにかくやってみようと思っている。その先に何があるのかは、またあとで振り返ればいいのだ。
後期の活動の方針としては、やはり直感と好奇心に基づいて、越境を続け、自分なりの研究テーマを模索していきたいと考えている。まずはそのひとつひとつの活動に没頭し、活動が終わった後に振り返り を行い、しっかり意味づけをする。そうしてじっくりと自分のテーマを探していきたい。海へ飛び出すということを、恐れずにこれからも続けていく。
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